大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)1211号 判決

島根県那賀郡江津町大字郷田八一三番地の一

上告人

江津産業株式会社

右代表者代表取締役

室崎勝造

右訴訟代理人弁護士

草光義質

同県益田市大字遠田三七三三番地の一

被上告人

渡辺憲次

同県那賀郡江津町大字郷田三三三番地

被上告人

三浦由孝

同所同番地

被上告人

三浦庸靖

右法定代理人親権者父

三浦由孝

同母

三浦道子

右当事者間の仮処分異議事件について、広島高等裁判所松江支部が昭和二八年九月二五日言渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人草光義質の上告理由について。

同一仮処分に対し、別に民訴七五九条に基く取消申立事件が係属しているからといつて、その以前に申立てられた仮処分に対する異議(民訴七五六条七四四条)を容認して、仮処分を取消すことは、所論のように、民訴二三一条の趣旨に違反するものではない。論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

昭和二八年(オ)第一二一一号

上告人 江津産業株式会社

被上告人 渡辺憲次

外二名

上告代理人草光義質の上告理由

原審判決は法律の解釈に関する重要なる主張につき誤つた判断をして居る。

原審に於て第一審債務者(原審判決に於ては単に債務者と表示する)は原判決中債務者両名敗訴の部分を取消す、債権者の本件仮処分命令申請を棄却する、訴訟費用は第一、二審共債務者の負担とするとの判決を求める旨申立て、裁判所はその判決主文に於て債権者並びに債務者渡辺憲次及同三浦庸靖の本件各控訴はいづれもこれを棄却する、この判決は第一項に限り仮りにこれを執行することができると判決している。然るに右第一審債務者で且広島高等裁判所松江支部に於ける申立人(債務者)である三浦庸靖、相手方(債権者)江津産業株式会社間の昭和二六年(ウ)第二五号仮処分取消申立事件に於て申立人は松江地方裁判所昭和二二年(ヨ)第一四号仮処分命令申請事件につき申立人は同年一一月一日同裁判所がなした仮処分決定中別紙目録記載(一)乃至(六)の各不動産に関する部分はこれを取消す、この判決は第一項に限り仮りにこれを執行することができる旨申立て裁判所は同一趣旨の判決を為している。然らば右二つの事件は全く訴訟物を同じくしその申立の理由及目的も同一で民事訴訟法上同一の訴訟物に対し同時に二つの訴訟が係属することは同法第二百三十一条に於て許されざることであるから本件の判決の右仮処分取消申立事件の判決がいずれか一つの判決があつて他の一方の事件の判決ではその申立を不適法として却下さるべきものであるから原審判決はこれを破毀し新たに裁判を為さるべきものである。

以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例